2010年11月10日水曜日

講義録:迷子学入門Ⅰ(木村)

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2010年11月10日(水)15:00〜18:00
講義名(担当者):迷子学入門Ⅰ(木村)
集合場所:墨田区京島三丁目 原公園
迷い場所:墨田区京島広域
発表場所:墨東大学京島校舎
参加人数:11名(新入生女子1名 新入生男子3名 教員2名)
内容:日常では経験する機会が減ってきた「迷う・彷徨う」という行為を通して「いつもと少しちがう自分」を経験・発見できるかも、という実験(のようなもの)を行います。
複雑に入り組んだ路地空間、にぎわう商店街。参加者は「迷いがいのあるまち京島」を、サイコロを使いながら一人で1時間彷徨います。その後それぞれがまちを彷徨った過程で見たもの、起こった出来事などを墨大京島校舎にてマップに書き込みながら、各々の彷徨い歩きを発表、そして語らいを行います。
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15時、京島3丁目にある原公園に集合。あたりはすでに日がかげりはじめています。夕闇に包まれた彷徨いになりそう。
全員集合後、簡単な自己紹介、サイコロを使った迷い方の説明を行います。使うサイコロは二つ。一つ目のサイコロには直進」「右折」「左折」などを示す矢印が書いてあり、この矢印に従って歩くことになります。(曲がり角がある度にこのサイコロを振ります)もう一つのサイコロ。これは1から6までの目が示してあるごく普通のサイコロ。出た数字によって様々なミッションが与えられます。(これは5分ごとに振ることにしました)
このミッションは参加者全員で話し合って決めてみました。
以下、六つのミッション

1. その場所に名前をつける
2. そのときの心境、状況を五七五でツイートする
3. その場所からスカイツリーを撮影する
4. そのにあるものを拾う
5. そこにいた証をのこす
6. そこにあるなんらかの痕跡から勝手に物語を妄想する

以上のミッションを決めて、彷徨いスタート。ここから先はたった一人で知らないまちを彷徨う、という孤独な道のりです。そうこうしているうちに辺りも暗くなってきました。


みんなが彷徨っているあいだ、僕はオープンしたての墨東大学・京島校舎で「語らい」のためのセッティング作業。
何もないガランとした空間の壁面に、A0サイズの京島の地図を貼り付けます。ここにみんなの迷いの軌跡が落としこまれるわけです。セッティング終了後、僕もまちに出てみます。彷徨い中の墨大生に結構遭遇するかなと思いきや、なかなか出会うことが出来ません。みんな墨東の路地に吸い込まれて消えてしまったのでは(あるいは疲れて家に帰ってしまったとか)と一瞬不安に。しかしそれもそのはず、かつては世界一の人口密度を誇った京島エリアは路地の数も半端ではなく、偶然にまかせて彷徨う彼ら彼女らには「路地裏でばったり」というわけにはいきませんでした。
そして一時間後の集合時間。みんな続々と帰還してきます。駄菓子を食べながら、たこ焼き片手に、拾ったものを大事に握り締めながら。ところが集合時間になっても戻ってこない人も何名か。Bocktの岡部先生もその一人でした。
twitterのTLをみると「ガチで迷いました・・・」という岡部先生のツイートが。この迷子学入門は「迷子」と謳いつつも地図を持ちながらだったり、サイコロに方向を指示されたりで、本当の意味では「迷子」とは言えないわけです。迷子になる練習(?)のようなものです。なので岡部先生のリアルな迷子は気の毒ではありましたが、少し有難く嬉しい事件でした。


そして、全員集合。京島校舎に貼ってある地図にそれぞれの迷いの軌跡をペンで書き込み、その上に与えられたミッションへの回答を書いた付箋を貼り付けていきます。見る見るうちに地図が付箋で埋め尽くされ、一枚のモザイク画のようになってしまいました。これは単純に地図のサイズや付箋のサイズの設定ミスなのですが、たった一時間の間に、たった11人の行為がまちにたくさん積み重なった状態をダイナミックに示してくれているようで、思わぬ驚きを与えてくれました。一時間、11人でこの状態ですから、実際まちに住んでいる人達の行為や記憶はどれだけ大きなボリュームになるのか、想像もつきません。
地図への落とし込みが終わった段階で、それぞれが迷いのレポートを発表していきます。拾ってきた得体の知れないモノについてみんなであれこれ推理したり、場所の特性を読み取った上で不思議な名前をつけられた場所について想像を巡らせたりと、京島校舎での興味深い語らいは続いていきます。与えられたミッション以外にも、自ら子供に話しかけてみてスルーされたり、押上(!)でスカイツリーを撮影しているコミュニティーに混じりこんでみたり、和菓子屋さんにまちの歴史についてインタビューしてみたり・・・・・また逆に、まちのひとに「何やってるの?大変そうだねえ」と話しかけてもらったり。偶然の移動に身を任せつつも、それぞれの積極性をもってまちの断面を覗き込んだ様子が垣間見えて、ものすごくワクワクする時間になりました。


結果として、彷徨いを通じて11人の墨大生がまちにアクセスしたり、まちからアクセスされたり、と大変アクティブ(サイコロに指示されるといことはパッシブではあるけれど)な時間になったと感じました。彼ら・彼女らは「いつもと違う自分」になれたのか?この疑問については残念ながらタイムアップにより詳しく聞くことは出来ず。今度、ゆっくり聞かせてください。寒い中、皆さんおつかれさまでした。ありがとうございました。
(報告:木村健世)

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