2010年10月28日木曜日

講義録:ちいさな編綴実習 第1回(香川)

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2010年10月28日(木)18:00~20:00
講義名(担当者):ちいさな編綴実習第1回(香川)
集合場所:東向島珈琲店
内容:
この講座では「書いて綴じる」つまり、「(ひとりもしくは少人数で)本をつくる」ことを見直し、実験します。
第1回は、本のたたずまいについて考えてみました。少人数でつくるリトルプレスはページが少ないことが多く、本棚に並べたり、タイトルや著者の名前といった「言葉だけの情報」で検索して選んでもらうような性格のものでは(いまのところ)ありません。共感してもらう、わくわくしてもらう、その本と一緒に過ごす時間がちょっとだけ豊かになってもらう…などを想像しながら制作し、届けかた、置く場所を考え、制作をはじめます。
また、第1回の参加者には「誰かに見せるためのノート」という課題が託されました。イギリスの美術大学で、実習で使ったスケッチブックをそのまま提出するという課題をまねて、だれかが読むかもしれない「ちいさな本」としてのノートをとる、ということに挑戦してもらいます。
参加人数:5人(新入生男子1名、教職員1名)
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「ちいさな編綴実習」第1回目。折りたたみ傘がひっくり返ったり水たまりに足を取られたりと、相当の荒れ模様のなか、東向島珈琲店にあつまった5人で、静かに開講しました。
いま、誰でも情報の編集ができることがいろいろなところで強調されています。でも「本」をつくるとなると少しハードルが高い気がしてしまいます。この実習では、そのハードルを少しでも低くしたい。もしかしたら表現しなくても済むかもしれないものを、ちょっとだけ大事に心を込めて「もの」としての小さな本にしてみる。そのものができたときにどんなことが起きるのか…というところまで、参加者と一緒に実験していけたらと思っています。
この実習の名前について最初に一言。本を作る、ということだけであれば「編集」でも十分なのですが、多くの人がかかわり、分業のしくみの中でつくられているいわゆる世の中の「本」というものへの尊敬や、憧れからちょっとだけ自由になって、じぶんひとりで最初から最後までものをつくり、世に送り出すことを「編綴」という古い言葉に託しました。毎回の参加者がすくなくとも1冊のちいさな本に参加できるように構成し、また、自分のちいさな一冊を編綴できるようなバーチャルな大学の、アトリエネットワークになればと思って立ち上げました。また、講師を中心に、参加者のトライアル全3回(+α)の記録が『ちいさな編綴(仮)』という一冊のちいさなガイドブックに仕立てる予定です。


第1回の参加者に託された課題は、「誰かに見せるためのノート」でした。イギリスの美術大学で、実習で使ったスケッチブックをそのまま課題として提出するという課題があったことを受けて、第1回から参加した人には、本未満の小冊子としてのノートをとる、ということに挑戦してもらいます。
5名で開催された実習第1回の多くの時間は、文具王の和田哲哉さんが提案している「ノートの三要素」を手がかりに、本のたたずまいについて考えてみました。もともとは、ノートの機能として紹介されている内容ですが、ちいさな本のかたちをまずざっくりとイメージするには、まずものとしての「かたち」をイメージしてみる…というのはどうでしょう、というお話をしました。ちなみに、その三要素と、それをちいたな本にあてはめたときにどんなことを指すか…ということは以下の通り。
  1. サイズ (1) 大きさ(面積) (2) 厚み(ページ数) (3) かたち(A5、正方形など)
  2. 紙 (1) 色 (2) 柄 (3) 素材 …など
  3. 綴じ (1) 無線綴じ (2) 有線綴じ (3) リング (4) その他(自由)

ここで大切なのは、少人数でつくるリトルプレスはページが少ないことが多く、本棚に並べてタイトルや著者の名前といった「言葉だけの情報」で選んでもらうような性格のものでは(いまのところ)ないため「背」がありません。そのために、手に取った人に「読ませる」とうよりも、その本に共感してもらう、わくわくしてもらう、その本と一緒に過ごす時間がちょっとだけ豊かになるような「かたち」が、中身と同じくらい大切になってくると思います。「たたずまい」から存在するものをつくったり、届けかた、置く場所を考えることで、その本と出会いたい人にちゃんと「見つけてもらう」…そういうものを作りたいという願いを持てる自分の企画を、2回目の実習では考えていきます。
(香川文)

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