2010年10月21日木曜日

墨東大学について

「墨東大学(ぼくとうだいがく)」は、まちや地域について考えるための仕組みとして、2010年10月に実験的にオープンしました。学校教育法上で定められた正規の大学ではありませんが、「大学」という名前を冠しているとおり、いくつもの講座や実習が提供されます。まちづくりや地域活性をはじめ、さまざまなテーマを介して人と人が出会い、語り合う場所をつくる試みです。今年度いっぱいの期間限定の試みではありますが、できるかぎり単発でその場かぎりのイベントにならないよう、墨東エリアに何度か足をはこぶ(はこばざるをえない)仕組みをデザインしたいと考えています。また、墨東エリアをたんなるイベントのための「会場」として位置づけるのではなく、何らかのかたちで人びととの接点を持ち、(墨東大学というプロジェクトの)成果をまちに還すことも強く意識しています。

まちとの関わりを考える際、「大学」という設えや語り口が役に立つことに気づきました。たとえば入学すると発行される学生証は、「墨東大学」の一員としての意識を高めるだけではなく、ある種のスタンプカードのような機能をもった存在になります。何度か足をはこび、じぶんの学習の進捗を確かめるためのツールになるのです。学生証は、墨東に暮らす人びととの会話のきっかけにもなります。また、「墨東大学」の卒業要件として、全員に卒業制作を課すことによって、最終段階には何らかのかたちで、活動内容を報告する機会も生まれます。

「墨東大学」というプロジェクトは、おもに以下のような考え方にもとづいて、企画・運営されています。

(1) コミュニケーションの力を信じる
まず、私たちは、コミュニケーションの〈きっかけ〉づくりについて考えてみたいと思います。「大学」を模して、出会いの場面や日常のやりとりの仕組みを考えることで、あらためてまちのこと、暮らす人びとのことがわかってくるはずです。「墨東大学」をつうじて提供される講座や実習の内容自体は、もちろん興味ぶかいものばかりです。しかしながら、それぞれの講座がどのような場所で、どのように開講されるか/されたか…という実現に向けての過程に着目することで、「墨東エリア」の特質について、あらたな発見や気づきがあると考えています。

(2) 教えたいという欲求を満たす
「墨東大学」では、さまざまな講座や実習が企画されていますが、誰もが講座を提案し、開講することができます。私たちは、学びたい欲求ばかりでなく、同時に誰かに語りたい、何かを共有したいという想いもあるはずです。近年のネットワーク環境の変化は、誰かとシェアする気持ちを増幅し、また実現する機会を広げているように見えます。つまり、じぶんが日頃考えていること、取り組んでいることを持ち寄り、共有するための場が「墨東大学」なのです。その意味で、学校や教室ということばから連想しがちな、〈教員=学生〉という固定的な関係性は「墨東大学」では想定されていません。

(3) 特定少数の価値
「墨東大学」の講座は、さまざまな意味で自由に、柔軟にデザインされています。決められた校舎や教室はないので、インフォーマルな集いになることが多いのが特徴です。また、基本は少人数です。誰もがのびやかな発想で講座や実習を提案できるので、予期せぬかたちで、時には突然に科目が成り立つこともあります。いずれにせよ、「墨東大学」での活動をつうじて、私たちは、あらためてコミュニケーションや場づくりついて考えることになります。不特定多数の学生たちを想定した、マスプロ的な教育とは対極的な位置にある、いわば「私塾」のようなものです。

「墨東大学」プロジェクトは、「大学」というメタファーを介して地域に接近することによって、地域における人間関係のあり方やコミュニティへの帰属感、多様性・異文化の理解等の可視化を試みるものです。「墨東大学」運営の実践過程を分析・考察し、地域コミュニティのもつホスピタリティや関係変革への志向などを理解するきっかけになることが期待されています。くわしい経過等は、随時、このブログや墨東大学のオフィシャルウェブでお知らせするつもりです。

・墨東大学オフィシャルウェブ http://bokudai.net/
・墨大ブログ(bokudiary) http://bokuto-univ.blogspot.com/

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